「ドパガキ」という言葉をご存じでしょうか。
流行に疎い私でさえ認知しているので、大半の方は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
私がこの言葉を初めて認識したのはたしかX(Twitter)の「おすすめ」タイムラインのつぶやきだったと思いますが、最初の感想は、「なんかの効果音(オノマトペ)か?」でした。
だって考えてみてください。
ド(濁音)/パ(半濁音)/ガ(濁音)/キ(清音) ですよ?
こんな組み合わせの言葉はめったに耳にしませんし、目にもしませんよ。
文字数多いですが「デポジット」くらいではないでしょうか。
ということで、この「ドパガキ」とかいう言葉を、興味本位で解釈してみようと思います。
「ドパガキ」の意味
まずは「ドパガキ」の一般的な意味を確認してみましょう。
…といっても、「ドパガキ」については各々お分かりの方も多いと思いますし、Web記事もいくつかありますので詳細までは控えます。
例えばこんな記事。

※ソースの集英社オンラインを掲載しようとしたのですが、(広告多すぎな意味で)あまりにも読みづらいのでこちらを採用しました。
「アドガキ」なんていう言葉もあるんですね、こちらはこの記事を書いているときに初めて目にしました。
さて、「ドパガキ」ですが、主に以下のような意味を持つようです。
ドパガキ
「ドーパミン中毒」の「ガキ」の略称(蔑称の意味も含まれそう)
スマートフォンやショート動画などのコンテンツに依存し、即時的な快楽(ドーパミン)を絶え間なく求め続ける若年層を揶揄、あるいは自虐的に表現した「インターネットスラング」。
短時間で自身の欲求が満たされる(成果が出る)事象を好む傾向があるため、コツコツ、じっくりと積み上げていくような事象は耐え難いとされています。
「ガキ」とついているため若年層(=子ども)のことを指している言葉ですが、同じような状態になっている大人も一定数いますよね。
少なくとも私自身はスマートフォンがないと生きていけないと思っていますし、片足を突っ込んでいるといっても過言ではないなぁと思ってしまっています。
その反面、このような記事をAIの自動生成に頼らないで書くくらいの甲斐性はまだ持ち合わせているようなので耐えているか…?とも思います。
「ドパガキ」の語感
記事の最初にも書きましたが、私がこの「ドパガキ」という言葉に惹かれたのは「語感が強烈に頭に残ったから」でした。
ちなみに、『現代日本語書き言葉均衡コーパス』(中納言)1で同じような音の構成を持つ4文字の言葉を確認してみたところ、
・とあるアダルト文庫小説で出てきた「ぐぷぐぷ」という効果音
・とある保健系の書籍に書いてある「ゾピバン錠」という薬(?)の名前
この2つしか出てきませんでした。
※他の探し方があるかもしれませんので、該当する用語があればぜひ教えてください。
「ドパガキ」の意味を知ってからはまぁ納得か… とはなりましたが、それでもこの音の組み合わせは耳に残ります。
もしかすると、他では聞き慣れない/見慣れないこの「語感」が、スラングとして広まった理由の一つになっているのかもしれませんね。
なぜ「ドーパミン」を「ドパ」と略すのか
「ドーパミン」を「ドパ」と略すところがすごくいい!
ということで、なぜ「ドーパミン」が「ドパ」と略されたのかを考えてみようと思います。
【ちなみに】
医学・薬学の方面ではそもそも「ドパミン」と表記するようです。
しかし、社会一般的には「ドーパミン」が使われているため、「ドーパミン」という言葉がなぜ「ドパ」と略されるようになったのか、という目線で考えてみます。
複合語は4文字の省略が多い
日本語において一般的に使われているカタカナ言葉の省略語にはある程度の方向性(決まり?)のようなものがあります。
例えば、「4文字に省略されやすい」という方向性。
この方向性はあくまでも「複合語」として「前」の要素と「後」の要素に分けられる場合のものです。もちろん、「スマホ」のように3文字の略語だってありますし、アルファベットで省略されるときだってあります。
しかし、それでも圧倒的に4文字の省略が多いのです。
※ここでは簡潔に説明するために「文字数」でカウントしていますが、難しい書き方をすると「モーラ(拍)」の数となります。
| 省略前 | 要素 | 省略後 |
|---|---|---|
| サービス残業 | サービス+残業 | サビ残 |
| パーソナルコンピューター | パーソナル+コンピューター | パソコン |
| スーパーチャット | スーパー+チャット | スパチャ |
| ハーフアニバーサリー | ハーフ+アニバーサリー | ハフバ |
| ソーシャルゲーム | ソーシャル+ゲーム | ソシャゲ |
| サウンドトラック | サウンド+トラック | サントラ |
| ガキの使いやあらへんで | ガキの+使い(やあらへんで) | ガキ使 |
| マインクラフト | マイン+クラフト | マイクラ |
| 大乱闘スマッシュブラザーズ | (大乱闘+)スマッシュ+ブラザーズ | スマブラ |
| スーパーファミコン | スーパー+ファミコン | スーファミ |
| オープンキャンパス | オープン+キャンパス | オーキャン |
| パワーハラスメント | パワー+ハラスメント | パワハラ |
枚挙にいとまがないのでこのくらいにしておきますが、人間というのはなんでも省略しますね。
さて、ここからが本題なのですが、実は意図的に「とある特徴」を共通して持っている言葉と、それ以外のものに分けて書きました。
特徴を持っているのは「サビ残・パソコン・スパチャ・ハフバ・ソシャゲ」です。
要するに、ここに「ドパガキ」も入るわけですね。
その特徴というのは、2文字目(2モーラ目)に「ー(長音)」が入っていて、省略語になった時に消えてしまっているというものです。
その他の言葉は前の要素から2文字+後ろの要素から2文字の合体で表現されています。
あえて書きませんでしたが、「カーナビ(カーナビゲーション)」のように後ろの要素をまるっきり消し去るような省略もありますし、「サントラ(サウンドトラック)」のように他の規則にしたがったものもあります。あしからず。
「ー(長音)」の存在意義
ではなぜ長音は消されてしまうかわいそうな存在になってしまうのでしょうか。
実はこれ、実際に「前の要素から2文字+後ろの要素から2文字の合体」を並べて見てみれば直感的に分かるかもしれません。
| 省略前 | 一般的に使用されている 省略語 | 前要素2文字+ 後要素2文字の合体 |
|---|---|---|
| サービス残業 | サビ残 | サー残 |
| パーソナルコンピューター | パソコン | パーコン |
| スーパーチャット | スパチャ | スーチャ |
| ハーフアニバーサリー | ハフバ | ハーバ |
| ソーシャルゲーム | ソシャゲ | ソーゲ |
何か、「あまりにも…あまりにも…!」という感じではないでしょうか。
要するに、長音は1文字目(1モーラ目)の母音の音を伸ばしただけで情報量が乏しすぎるのですね。
無理やり長音を生かして省略しようとすると「サービ残」「パーソコン」「スーパチャ」のように、エセ外国人が話しているような感じになり、違和感がぬぐえません。
それに、前半の要素の文字数に対して3文字(3モーラ)も使ってしまっては、省略している意味が薄まります。
何より合計5文字(5モーラ)となってしまい、おさまりが悪くなってしまいます。
情報量を多く持ちつつ、音の数(文字)を少なくして使用する。まさに省略語の醍醐味です。
ただただ短くしただけでは伝わらないしあまねく利用されづらくなります。
理解されやすく伝わりやすい、そんな省略語を作成するための自然な工夫のひとつなのですね。
そんなわけで、「ドーパガキ」でなければ「ドーガキ」でもなく、「ドパガキ」と、長音を消した状態で省略されて使用されているのでしょう。
「ガキ」という言葉の持つ意味の強さ
「ガキ」という言葉にも注目してみましょう。
そもそも「ガキ」という言葉にどんなイメージを持ちますか。
プラスかマイナスかの二択であれば、なんとなく マイナス な感じがしませんか。
そもそも「ガキ」は「餓鬼(がき)」という仏教由来の用語です。
ここで広辞苑2の意味を引いてみましょう。
が-き【餓鬼】
①[仏]悪行の報いとして餓鬼道に落ちた亡者。本体は供物を受けられない亡霊のこと。喉が細く飲食することが出来ないなど、常に飢渇に苦しむ姿で描写される。
②子供をいやしんでいう称。浮世床(初)「-の時分覚えたことは忘れねえものさネ」。「うるさいーだ」
①がその仏教由来の意味、そして②が①の意味から転じたとされているようです。
さすがに仏教には詳しくないのでお寺が公開しているページを参照ください。

「餓鬼」と「子ども」に「貪るように食べることがある」という共通点を見出し、それを比喩的な意味で「ガキ」という言葉が使われているのですね。
「ガキ」という言葉に負のイメージが付きまとう意味が何となく分かったところで、一般的に使われている「ガキ」が後半に付く言葉をまとめてみましょう。
- ワルガキ:いたずらばかりする子ども。悪童。
- クソガキ:生意気な子供。忌々しい子ども。
- マセガキ:年齢の割に精神的・肉体的に背伸びしている子ども。
- エロガキ:性的なことへの好奇心が旺盛な未成年の男性。
- メスガキ:成人男性に対し高圧的かつ性的な挑発をする未成年の女性。
- オスガキ:「メスガキ」の逆
俗称も多分に含まれていますので、意味はいろいろなソースを基に記載しています。
さながら「ガキコレクション」と言ったところ。
なんとなくお判りでしょうが、これらの言葉の共通点は「蔑称」であるという点です。
基本的には対象を見下したりバカにしたりするときに使われる言葉です。
一部はキャラクターの持つ性格や趣味嗜好のいちジャンルとして確立しているものもありますが、それでもやはり一般人にとってはマイナスイメージが先行するものと思います。
ということで、「ガキ」という言葉は基本的にマイナスの言葉をひっつける強力な磁石なのですね。
おわりに
ということで、「ドパガキ」って言葉の語感がすげぇな?というところから始まりましたが、なんとなく皆さんの中で思うところはありましたでしょうか。
個人的には音がすごいと思っただけで自分の中では流行らなそうな言葉ではありますが、時流的には広まるのも無理はないのかなと思います。
その時代・年代ごとに生まれた、とある特徴を持った子どもたちを表す言葉は多々あります。
「○○世代」「厨房」「かぎっ子」「ゆとり」「ヤンキー」などなど…。
基本的にはその時の年代や社会動向、生活様式などが反映されたものですね。
個人的には、大人から見た子どもの表現はどこか冷たい(マイナスで他人事な)イメージを持ちます。
ただ反面、端的にその時代を知る・表現できる言葉としては優秀だなと感じることもあります。
様々な新語を学びつつも、それらの言葉がどのような成り立ちで、どのような構成で、どのような意味を持つに至ったのかを知ることはいいことだなぁと思います。
普段使うか使わないかは置いておいて、知識欲を満たすために今後もいろんな言葉を知っていきたいものですね。